2次試験で求められる能力とは何か?(1/4)

「2次試験に合格して、中小企業診断士になりたい!」と思い、多くの人が2次試験対策の教材を開く思います。しかし、具体的にどのような能力が必要か、明確に根拠をもって書いてある教材に出会ったことはありますか?

そんな人は、まずいないと思います。あくまでも2次試験は、採点基準も、模範解答も分からない、謎に包まれた試験とされていて、各受験校などが「過去問を分析して必要な能力を類推」して教材を作っています。

しかし、実は「どのような能力が必要か」については、中小企業庁が公表しているんです。

今回は、本日2017年2月2日現在、未だ他のサイトや受験校が語っていない「2次試験で求められる能力」の概要について、紹介したいと思います。

「2次試験に求められる能力」を示す根拠

中小企業診断士資格制度の成り立ち

まず「2次試験で求められる能力」が何の資料にに掲載されているか?

結論から言えば、これは「養成課程のカリキュラムの資料」に掲載されています。「えっ」と思う方も多いと思いますので、背景として現行の資格制度の成り立ちから見ていきたいと思います。

現在の中小企業診断士試験制度は、2001年(平成13年)に始まった「新試験制度」をベースにしています。経済産業省の公表している当時の新制度説明資料「新しい中小企業診断士制度について」に詳しく載っていますが、この時から、「中小企業診断士」を認定する国家資格となり、試験も1次・2次試験+実習という現在と同じ構成となりました。養成課程への参加については、この時点では、1次試験合格者という制約はなく、中小企業大学校への入校が認められさえすれば、誰でも参加が可能でしたが、1次・2次試験+実習の内容と養成課程の講義の内容の整合性・レベルの同一性の確保のための調整が行われました。

その後、2006年(平成18年)に、改正が行われて、現在と同じ仕組みになりました。1次試験は、科目が7科目に減少して科目合格制になり、養成課程は1次試験合格者のみが参加できるようになりました。また、養成課程は中小企業大学校以外の教育機関も「登録養成課程」として設置できるようになり、法政大学大学院・中京大学大学院・(社)生産性本部の3機関が同年に登録を行って、平成19年4月からコースを開始しました。この初年度登録については、中小企業庁「中小企業診断士登録養成機関の登録について」に掲載されており、ここに参考資料として「中小企業診断士制度スキーム新旧比較」という資料が添付されているので、この資料を見ると、2001年(平成13年)からどこがどのように変わったのかが分かります。

この改正は、経済産業省 中小企業政策審議会が「中小企業診断士制度の在り方について(案)」を作成し、現役の中小企業診断士からパブリックコメントを募集して意見を反映することで、改正方法が決定した、という経緯がありますが、その検討の中で、養成課程の修了者は、

法律上求められる「国家試験合格者と同等以上の能力を有していること」

が要件である、と明記されています。

また、上述した2001年(平成13年)の「新試験制度」の説明資料「新しい中小企業診断士制度について」でも、試験制度と養成課程について以下のように述べていおり、「試験制度と養成課程のカリキュラムは、内容・レベルともに、試験制度と同一以上にする」という思想で設計されていることが分かります。

①試験制度と養成課程の講義等の内容の整合性
現行の養成課程においては、前述のように教材・講義内容等が基本的に講師に委ねられているので、その内容が試験と同一レベルであるかどうか、客観的に検証することは困難である。そのため、前述のように科目ごとの内容、教材についてある程度標準化を図る必要があるが、その際には、試験制度との内容の整合性・レベルの調整を図る必要がある。

※ 中小企業診断士試験制度の歴史について興味のある方は、詳しくは、 Wikipedia や LEC の「診断士試験 今昔物語」等をご参照ください。

中小企業診断士試験制度と養成課程カリキュラムの比較

次に、試験制度と、その「試験と同一以上にする」ための養成課程のカリキュラムを比べてみたいと思います。

中小企業庁が公表している資料に「登録養成課程を実施するためのカリキュラム等の標準モデル」というものがあります。これは、5章構成になっていて、章ごとにそれぞれ別のPDFファイルで中小企業庁のサイトに掲載されているのですが、

このうち、「Ⅰ.標準カリキュラム」「Ⅴ.受講生の修得水準審査要領」の内容から養成課程のカリキュラムを抜粋して、試験制度と比較してみます。

試験制度と養成課程カリキュラムの比較

すると、驚くほど簡単に、対応関係が割り出せてしまいます。

試験の事例Ⅱ「マーケティング・流通」では、店舗や施設に関する内容も問われますし、また事例Ⅲ「生産・技術」では、情報システムの活用についての内容も問われます。年度によっては事例間で多少のオーバーラップはあるかも知れませんが、ほぼ上に示した表の対応関係になっていると言えるでしょう。

だから、言えるのです。

2次試験で求められている能力=養成課程の経営診断Ⅰで身に付ける能力

であると。

「2次試験に求められる能力」とは

つまり、これは「養成課程の経営診断Ⅰで身に付ける能力」なので、養成課程のカリキュラムを見ればバッチリ書いてある、ということなのです。

この中身については、次の記事で詳しく説明していきたいと思います。

なぜこの情報が出回っていないのか?

しかし、「2次試験で求められる能力」といった重要な情報が、中小企業診断士受験業界で、まったく出回っていないというのも、不思議な気がしませんか?

実は、これは受験校にとって都合が悪いからなのです。受験校は、受験生からお金を取って、試験対策を教えることによって成り立っています。しかし、この情報を教えるとなると、同時に「養成課程」のことも教えることになってしまうのです。「養成課程」のことを知れば、受験生のうちいくらかは、「養成課程」に流れます。これは、2次試験の受験生全体が毎年平均約4,600人というもともと非常に小さい市場が、より小さくなってしまうことを意味します。

受験校の中では「養成課程」という存在自体が、まるで禁句のような扱いになっていることからも分かるように、あえてその存在に触れなくてはならない話はしたくないのです。あるいは、受験校関係者が「受験校だから関係ない」と思って養成課程の資料を見ていない、か。 いずれにしても、受験校から出てくる情報ではない、ということです。

そして、多くの受験生が、受験校の発する情報を基に学習を進めています。私のようにいちいちソース情報にあたって分析する人など、ほとんどいません。だから、この情報が出回らないのです。余談ですが、某掲示板サイトで「養成課程」出身者に関して悪評が立っていたりしますが、もしかすると、市場の縮小を恐れる受験校関係者が書き込んでいるのかも知れませんね(笑)。

続きはこちら→「2次試験で求められる能力とは何か?(2/4)


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする